【MCPミャンマー紀行 vol.15 旅する2冊】
ミンガラーバー(こんにちは)
いつも有難うございます。
ミャンマーの文字を知っていますか?
“အမြဲကျေးဇူးတင်ပါတယ်”丸っとしていてカワイくて、興味をひかれる文字ですよね。
今回は、ミャンマー語が読めない服部こまこさんが高田馬場で出会った2冊のミャンマーの本の話です。
読めなくても…! 本が届けるメッセージ
服部 こまこ
5月のある日、高田馬場駅の高架下に【好きな本1冊とって、好きなだけ寄付してください】と書かれたポスターが貼られ、たくさんの本が並べられていました。在日ミャンマー人の文学愛好家グループが不定期に開催しているブックキャンペーンで、集めた寄付は母国に送るのだそうです。
本を見ていると、白いワンピースに大きなリュックを背負った女性が近づいてきて声をかけてくれました。Aさんはヤンゴン出身、2年前に来日して専門学校で学んでいるそうです。「ミャンマーにいる家族が心配。弟がデモに参加したきり連絡が取れません」と話してくれました。
Aさんのリュックには本がたくさん詰まっていて、私はミャンマー語(ビルマ語)がまったく読めませんが、表紙に惹かれるものが何冊かありました。日本語で簡単なやりとりしたところ、写真左側は「恋愛小説」、右側は「有名な女性作家の本。今日持ってきた本の中で一番のおすすめ」ということがわかりました。その2冊をもらう代わりに、持っていた日本語の本と少しばかりの寄付をお渡ししました。
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後日、マレーシアにいるチン州出身の友人Jに本の画像を送ると、もう少し詳しいことがわかりました。
左の本の題名は『Khin Hnin Yu、あなたをこんなにも愛している』(作者は??)。
なるほど、恋愛小説ねと思いつつ、念のため、Khin Hnin Yuを検索してみると、1925年ヤンゴン生まれの女性作家でミャンマー国立文学賞を2回受賞している方だということがわかりました。第二次世界大戦直後のビルマの生活描写が高く評価されているそうです。
右の本の著者は Ju(ジュウ)。1958年生まれの有名な作家で、この『記憶(Remembrance)』という小説がデビュー作でした。物語の内容はわかりませんが、Juの小説には強くて賢いヒロインが描かれることが多いそうです。
どちらも日本では出版されていないようですが、文学愛好家のAさんが読んでいた小説の内容が気になります。
敬虔なキリスト教徒のJは、Aさんのご家族の安全を祈ってくれました。
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8月のある日、横浜でミャンマーの写真展がありました。写真の説明をしてくれたKさんはヤンゴン出身で、日本のIT会社で働いているそう。日本ではとても貴重なタナカ(ミャンマーの天然の日焼け止め)をつけてくれながら、故郷のお父さんがコロナに感染して自宅療養中だということ、最近のヤンゴンのことなどを話してくれました。翌日、Kさんに2冊の本のうち1冊を渡すと、ミャンマー語の小説を見て驚き、懐かしんでいたようです。
私に新しい世界を見せてくれた2冊のペーパーバックは、この先もまだ旅を続けるのかもしれません。
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