【MCPミャンマー紀行vol.22ミャンマーのいきもの語り その3】
いきもの語り最後の第3話は、食べる野生動物の話をします。
食糧としての昆虫
東南アジアでは昆虫類は、身近な場所で得ることのできる動物性タンパクとして一般的な食材。ただし全て天然物なので季節差(発生時期)があるようだ。また生(なま)では保存に不適当なためか、すでに加工されたものが多いようである。
エンマコオロギの1種
北シャンのラショーの夜市でコオロギの唐揚げが山積みで売られていた。ビールのおつまみのようだった。同様のものはカンボジアでも見たが、この時は揚げが不十分だったようで、食した数時間後に激しく腹痛になった。コオロギは完全に内臓まで揚げないとダメらしい。雑食で、ミミズなどもよく食べるので内臓が痛みやすく、かつ土壌にいる雑菌も体内に有しているからだと思う。かつての腹痛を思い出し、ラショーでは口にするのをやめた。これほどの多量のコオロギを獲るには何かトラップでも仕掛けるのだろう。例えばウナギ獲りの筒ザルを地面に置き、中に餌を入れておけば一晩で数百匹は楽に採れそうだ。
セミの1種
こちらも北シャンのラショーの夜市で唐揚げコオロギと共に山積みで売られていた。
よく見るとセミの翅が伸び切っていないものが多い、つまりそれらは羽化直後のセミだろう。セミは季節的に多量に発生するので、夜間に羽化直後でまだ飛べないセミを見つけ、止まっている枝を叩けばザルに落ちて簡単、かつ短時間で採れはずである。こちらはコオロギとは違い、幼虫期に地中で木の根に止まり100%樹液を吸うだけの生活なので生でも大丈夫そうだが唐揚げにされていた。(やはりミャンマーの人たちは油が好きだ)この唐揚げセミは、食感がエビに近く、ほんのりと甘さがある感じで美味しい。米国では、十七年ゼミというのが十七年周期で大発生し、果樹園に甚大な被害をもたらすと言う。そこで果樹農家は羽化直後のセミをはたき落とし、「ソフトシェルクラブ的な唐揚げ」で商品化を試みたが虫食のイメージと、さらに十七年に一度しか食べられないということで失敗したらしい。十七年に一度のプレミアムなら、ヤク漬けの牛よりも売れそうなのに、果樹園によってオレンジ風味とか、アーモンド風味とか美味しいのに決まっている。一度、味わってみたかった。
ゾウムシの幼虫
ヤシゾウムシの1種の幼虫は、ヤンゴンの港近くの夜市で見つけた。これは3センチほどの大きな幼虫で、ミャンマーでは初めて見た。おそらくサゴ椰子の生育域が河口近くだから山地や内陸部では得ることができないのだろう。もちろん鮮度も大切。タイやマレイシアでは村人のオヤツ的な食材。唐揚げにはせず、串に刺して、軽く火に炙ってレアな状態を食べる、外皮は少々硬いが中はクリーミー。日本では山間部でカミキリムシの幼虫を食べるのに似ている。
ハチの子(幼虫)
市場で最も一般的な虫食材。以前、北シャンの市場で見たものは長さ2mほどの巨大な巣から女性三人が幼虫と蛹を選別中のものだった。巣をバラバラにされてもなお、巣の蛹室を守る働きバチがいた。見るとミツバチではなく、小型のスズメバチの一種だった。
村人が背中に担いで持ってきた、これほど大きな巣は滅多に採れないと言う。店の棚には、瓶詰め(オイル漬け?)の蛹や羽化したばかりの成虫もあり、この種のハチを日常として売られ・食べていることがわかる。日本でも駆除したスズメバチの巣から羽化直後の成虫を選び唐揚げにするとエビのようで美味しい。ただし羽化直後がポイントで体が硬くなってしまった成虫は揚げても美味しくない。
ミツバチの場合は、巣から絞りとった蜂蜜をビール瓶に入れて売っている。その時、必ず瓶の蓋は無いか、緩んでいる。キッチリ締めると発酵で瓶が膨張し割れてしまう。日本では熱処したものが瓶詰めされているから大丈夫。
山間の村に滞在すると必ずジビエを味わえる。イノシシ、鹿、カモシカ、野鶏などが主な種類。飼育している豚、牛や鶏やアヒルなどの家畜・家禽は特別の日にしか供されない。以前、僕らの食事のために家横で鶏をさばいていた。見ていると極めて手際が悪い、おそらく彼らは普段から鉄砲で仕留めた野鶏や獣を食料として利用しているからだろう。つまり生きているものを捌くのとは違うのだ。それを見てこれなら僕の方が断然うまいと思った。山間部では鉄砲を持っている村人によく出会う。これからも、彼らが野生動物を貴重な食材としていることがわかる。さてジビエの味だがその肉は驚くほど硬くてまさに歯が立たない、しかし食べ慣れてくるうちに、噛めば噛むほどその味を理解できた。まさに噛み締めるとはこのことだった。
市場の鮮魚・干物
市場での魚売りも見ると興味深い。鮮魚のほとんどがコイ科とライギョ類やナマズ類、川エビ類、そしてカエルやカメ。中でもライギョとナマズは生きて売っているので体色が鮮やかに残り、種類数が多いのがわかる。中には日本の熱帯魚店で見かけるものも少なくない。それ以外の小魚は、たらいの中で色が抜け横たわっているので、その鮮度が怪しく買うには躊躇してしまう。
その他は山奥であっても、海水魚の干物が豊富である。それらはアジ、フエダイ、シイラ、エイ、エビなどがほとんどであり、魚に詳しい人なら興味深いだろう。以前、北シャンでミドリガメ(アカミミガメの稚亀)が売っていたが、あれはペット用か食材か聞くのを忘れた。またイモリの干物もよくに目にする、さてこちらは薬用か?
野山で出会うことがない野生動物も、市場で見ることも時にはある。また旅の途中で屠殺現場を見ることもある。いきもの好きには辛い場面も少なくないが、大変に興味深い。人が生きていくためには、生ものの命をいただかないといけない。しかし僕たちが食材として肉類を食べることと、どこか違いを感じる。なぜならば辺境の地に住む人たちは、人も自然生態系の一部として存在としていることを感じるからである。
(ミャンマーいきもの語り 終わり )
河合ツグオ(ランドスケープアーキテクト)写真・文
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